睡眠時無呼吸症候群(いびき)とは
睡眠中に無呼吸を繰り返すことで様々な合併症を引き起こす病気で成人男性の約3~7%、女性の約2~5%にみられます。男性では40歳~50歳代が半数以上を占める一方で、女性では閉経後に増加します。原因として、「肥満で首周りに脂肪がある」「あごが小さい」「扁桃腺が大きい」などがあります。睡眠中にこれらの原因によって舌の付け根が気道(空気の通り道)を閉塞させてしまうと、無呼吸が生じます。自覚症状として、「夜何度も目覚める」「夜間の頻尿」「起床時の頭痛」「日中の眠気や集中力低下」などがあり、家族から「大きないびき」や「呼吸が止まる」ことを指摘されて受診される方も多くいらっしゃいます。居眠りや集中力低下による交通事故の発生率も健常人の約7倍となります。
睡眠時無呼吸症候群は上記のような症状を来たして睡眠や日常生活の質を低下させるのみならず、様々な合併症を来たすことが問題となります。糖尿病は1.5倍、高血圧は2倍、心疾患は3倍、脳血管疾患は4倍に発症リスクが上昇すると言われています。逆にこれらの生活習慣病で治療中の方は睡眠時無呼吸症候群が隠れていることも多く、睡眠時無呼吸症候群の治療によって持病も改善出来る可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群(いびき)の検査
睡眠時無呼吸症候群が疑われた場合は、まず自宅での簡易モニター検査を行います。携帯型の検査器によって一晩の鼻の気流や血液中の酸素の状態(酸素飽和度)を測定します。簡易モニター検査で軽度あるいは重度の睡眠時無呼吸症候群と診断した場合には速やかに治療を選択・開始することが出来ますが、中等度の睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には治療の適応を正確に判断するための精密検査に移行していきます。簡易モニター検査は自宅に郵送してご自身で装着することも出来ますし、専門業者より使用方法を指導することも出来ます。費用は3割負担の方で2,500円程度です。
精密検査は基本的に一泊入院による「睡眠ポリグラフ検査」です。当院からは、近隣の総合病院に依頼をいたします。この検査による重症度判定を最終結果として、治療を選択していきます。
睡眠時無呼吸症候群(いびき)の治療
肥満のある方であればダイエット、扁桃腺が大きい方であれば耳鼻科での治療を検討いたしますが、睡眠時無呼吸症候群は極力早い症状改善が望まれますので、下記のような治療も積極的にお勧めいたします。
マウスピース
簡易モニター検査で軽症(1時間あたりの無呼吸回数15回以下)、あるいは睡眠ポリグラフ検査での一定の基準(1時間あたりの無呼吸回数20回以下)であれば、睡眠時無呼吸症候群治療用のマウスピースをお勧めします。マウスピースを就寝時に口の中に装着すると睡眠中に下あごが前に出て舌がのどの奥に落ちづらくなり、舌の位置が上がって気道が広がり空気が通りやすくなります。マウスピース作製は歯科で行います。当院は真隣に提携の歯科クリニックがありますので、予約の空きがあれば速やかに受診頂けます。
CPAP(シーパップ)
CPAPは持続陽圧呼吸療法のことで、機械で圧力をかけた空気を鼻から気道に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止する睡眠時無呼吸症候群の標準的治療法です。簡易モニター検査で重症(1時間あたりの無呼吸回数40回以上)あるいは、睡眠ポリグラフ検査で1時間あたりの無呼吸回数20回以上の場合に適応となります。
15~20cm位の大きさであるCPAP機器本体とあらかじめ設定した圧力で空気を送るチューブ・鼻に当てるマスクからなり、睡眠中はこれを装着します。細かい設定は実際の効果や使用感に基づいて調整していきます。重症の睡眠時無呼吸症候群の患者さんにおいて、CPAP治療を行った場合と行わなかった場合とを比較した研究によると、CPAP治療を行った患者さんの方が明らかに長生きできたなど、多くの研究によって睡眠時無呼吸症候群に対するCPAPの効果が証明されています。3割負担の方で、治療費は月に5,000円程度です。
<参考文献>
・日本呼吸器学会ホームページ
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
・今日の治療指針2024年版
・ハリソン内科学第5版