高血圧の定義は収縮期血圧130mmHg、拡張期血圧80mmHg以上が持続すること、または既に降圧薬を内服している状態です。高血圧を治療する意義は，心筋梗塞や脳卒中といった心血管系の病気を予防することにあります。若くして血圧が高いほど高血圧による臓器障害の危険が高まるため，健診等で異常が指摘された方は（若いほど）早めの受診をお勧めいたします。
高血圧治療の始めは、血圧が上昇する特殊な原因がないかどうか調べることです。時には治療可能な疾患が隠れていることがあります。高血圧治療は減塩、K摂取などの食事療法、節酒、禁煙、減量、運動などがあり、個人の状態や嗜好によってそれぞれの重要性が変わります。これらの治療に加えて、降圧目標（後の合併症を少なくするために推奨される血圧）を達成するために降圧薬の使用も検討いたします。なお、著明な高血圧など緊急の場合には早めに薬剤を開始する場合もあります。

インスリン合成・分泌のための膵臓の細胞が破壊・消失されて血糖が上昇する1型糖尿病と、主に遺伝因子によってインスリン分泌が低下したり、インスリンが効きにくくなって高血糖となる2型糖尿病があります。後者には過食、運動不足、肥満、ストレスなども関与しますが、通常の生活を送っている方でも罹患し得る病気です。
高血糖が長期間持続した場合、動脈硬化や各臓器への合併を来します。失明、心筋梗塞や脳卒中の発症、腎不全の進行、足壊疽などによる下肢切断などに至れば、生命維持や生活にとって大きな支障となります。糖尿病治療の大きな目標は、こういった合併症を阻止して糖尿病のない人と変わらない寿命、生活の質を維持することにあります。糖尿病の治療は近年目覚ましく発達を見せています。食事・運動は重要ですがそれだけにこだわり過ぎず、薬の力も借りて無理のない治療計画を立てていきましょう。

高脂血症（脂質異常症）は、血液中の脂質、主にコレステロールと中性脂肪（トリグリセリド）の濃度が高い状態を指します。善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールや悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロール、中性脂肪、そしてこれらの総和として計算される総コレステロールにそれぞれ基準値があり、よく健診でひっかかる項目ではありますが、実は細かい数値に一喜一憂する必要はありません。高脂血症の問題は、将来の動脈硬化や心血管疾患のリスク因子となることですが、このリスクの大きさについては年齢性別や合併症、喫煙有無などで大きく変化します。そもそも心血管疾患のリスクが低い方においては、高脂血症の治療効果もわずかしかありませんので無理にコレステロールを下げる必要はありません。バランスのとれた食事や適切な運動を心がけて頂きながら経過を見ていきます。 逆に、心血管疾患のリスクが高い方にとって高脂血症治療は非常に重要であり、積極的に薬を使います。当院ではこういったリスク評価をしっかり行った上で薬剤を使用しますので、コレステロールの数値で悩まれている方は一度ご相談下さい。
ただし、まれに遺伝的にコレステロールが非常に高くなる方（家族性高コレステロール血症）もおられます。この病気では早いうちからの積極的な薬剤投与が必須であり、専門医受診が必要となる場合もあります。

高尿酸血症は、血液中の尿酸濃度が通常よりも高い状態を指し、一般的には7.0 mg/dL以上と定義されます。尿酸は体内でプリン体と呼ばれる物質（生命活動に必須な核酸の構成要素）から生成され、通常は尿から排泄されます。しかし、尿酸の生成が過剰であるか、または排泄が不足している場合、血中の尿酸濃度が上昇し、高尿酸血症が発症します。性別や年齢、体質によるところが多く、30-50歳代の男性では約3人に1人が高尿酸血症であると言われます。高尿酸血症自体の症状はありませんが、高度の高尿酸血症が持続することで尿酸の結晶が関節にたまり、急激な疼痛や腫れを引き起こす「痛風」や、尿酸結晶が尿路に堆積して結石を形成し、尿管に詰まって背中や腹部に激しい痛みを生じる「尿管結石」が起こる可能性が高まります。また、慢性的な腎機能障害の原因になることもあります。こういった状態が既に起きてしまった方や、数値が極端に高い場合には積極的な治療が必要となります。
プリン体の摂取制限はよく勧められていますが、80%の尿酸は体内で合成され、個人差も大きいため効果には限界があります。プリン体を避けようとするあまり食事のバランスを欠くのも問題です。肥満やアルコール摂取過多によっても尿酸値は上昇するため、プリン体制限より先に減量・運動や節酒が望ましく、尿酸排泄のための積極的な飲水も推奨されます。以上の対策によっても尿酸高値が続く場合には薬物療法を選択し、体内での尿酸の生成を抑える薬、尿酸の排泄を促進する薬などを適宜使用していくこととなります。