腹膜透析

腹膜透析とは

慢性腎臓病が進行し、毒素の排出などの腎機能が強く障害されると生命維持が困難となり、この状態を末期腎不全と呼びます。脳・心臓・肺などといった臓器において、臓器の機能不全は生命に直結するものとなりますが、幸いにも腎臓においては、腎機能の代わりをする治療「腎代替療法」が存在します。これが透析と腎臓移植です。多彩な腎臓の働きや通院・治療の負担などを考えると腎臓移植がベストですが、皆が受けられる治療ではないため多くの方が透析を選択します。そしてこの透析の中に血液透析と腹膜透析があり、それぞれに治療方法や効果に特徴があります。末期腎不全が近づいた方は、ご自身の生活・仕事・嗜好などを踏まえて腎臓移植・血液透析・腹膜透析からどの治療を行うか選択することとなります。
血液透析も腹膜透析も体から毒素や過剰な水・電解質を除去する治療です。
血液透析は多量の血液を体外に取り出し、これを浄化(透析)して再び体内に戻すことで直接的な血液浄化を行います。1分間に200mLほどの血液を処理する必要があるためシャントと言われる血管の手術を行い、血管を発達させます。血液透析は専門のクリニックや病院で発達した血管に針を穿刺し、1回約5時間、週3回行います。本来24時間働いている腎臓の代わりに行う治療ですので、通院を減らすことは基本的に出来ません。2022年末の時点で日本には35万人弱の透析患者さんがおられますが、97%は血液透析患者さんです。
残る3%の方が腹膜透析をされている患者さんになります。お腹の中に透析液を一定時間入れておくと、腸の周りを覆っている腹膜を介して血液中の余分な毒素や水分がお腹の中の透析液中に移動します。この透析液を体に外に出し、また新しい透析液をお腹に入れる・・・この交換作業を毎日3〜4回行って血液を浄化するのが腹膜透析です。透析液の出し入れのためには、お腹の中(腹腔内)と外をつなぐチューブをお腹に埋め込む手術が必要になります。

腹膜透析のメリット・デメリット

腹膜透析には下記のようなメリット・デメリットがあります。生涯にわたって腹膜透析を続けることも不可能ではありませんが、多くの方にとって腹膜透析は残存する腎機能を出来るだけ保持して血液透析までの期間を延ばす治療として位置付けられます。腹膜透析開始時には手術や初期の指導のため入院が必須となりますので、患者さんのご希望に合わせて腹膜透析治療を行っている総合病院へ紹介いたします。

メリット(血液透析と比較して)

  • 毎日続ける治療であるため、体調も比較的安定する。
  • 自宅で行うことが出来、通院は月1〜2回でよい。
  • 透析バッグを持参すれば自宅以外でも施行可能である。
  • バッグの交換時間には柔軟性があり、その日の予定によって変更可能である。
  • 針を刺す痛みがない。シャントなどの血管のトラブルがない。
  • 残存する腎機能を極力長く残存させることが出来る。
  • 血液循環動態に影響が少ない。
  • カリウム制限が不要である。
  • 緩和医療として自宅での透析を継続することも出来る。

デメリット

  • 残存する腎機能が廃絶した場合(=尿が出なくなる場合)、透析効率が不足する場合がある。毒素の除去や余分な水分の排出が難しければ、血液透析への移行が必要となる。
  • カテーテルからお腹に菌が入って起こる腹膜炎のリスクがある。実際に腹膜炎になった場合、1〜2週間の入院治療が必要となる。腹膜炎を繰り返した場合、「被嚢性腹膜硬化症」という命に係わる重大な合併症が起きる可能性がある。
  • カテーテル出口部をきれいに保つため、毎日の管理が必要である。(消毒や洗浄、保護)
  • 1日数回のバッグ交換に、それぞれ30〜40分を要する。ただし、夜間に自動で交換を行う治療(APD)も選択可能である。
  • 透析バッグの保管に場所をとる。
  • バッグの持ち運びやカテーテルの接続などを行うため、視力低下や麻痺があると一人で行うのは難しい。(家族や介護者の助けを借りることは出来ます。)
  • 透析液の注液・排液がうまく出来なくなることがあり、改善に入院や手術治療が必要となることがある。

福岡都市圏・粕屋地域で腹膜透析を行っている主な病院

九州大学病院、福岡赤十字病院、九州中央病院、福岡大学病院、福岡市民病院、原三信病院、白十字病院、九州医療センター、東医療センター、宗像医師会病院